ぴかまく公論 知財会議のススメ その1

2013 年 1 月 22 日

 -知的財産の権利化の進め方-

事務局 ディスプロ株式会社 桑原 良弘

 

 今回は知的財産権に関して、その権利化の進め方について提案する。

 中小企業にとって自社商品開発、独自技術開発は事業継続において重要な投資であり事業の源泉となる。作り上げたものを守り、広げていく一つの重要な手段として知的財産権を活用するにあたり、ビジネスでの活用を背景にどのような順番で検討するとよいのか提案する。

① ビジネスモデル

どのような仕組みで何を提供して利益を頂き、市場や社会にどう貢献していくか。この仕組みの中で自社がどう立ち振る舞うかを決めていくこととなる。ハードとしてどんな技術を使い、ソフトとしてどのように動かし、継続的なサービスと利益を回転させるシステムを検討する。この事業戦略を考えおおよその知的財産構築まで明らかにする。

② 商標権

まずは自社のビジネスを識別し認識してもらうために、事業・サービス・製品の名前を付ける。名前を付けるのは商品やサービスを顧客にどう気づいてもらうか、どう選んでもらうかを左右するので、名前が決まれば仕組みと提供するものが見えてくるといえる。ブランドを示すマークの検討も一緒にしたい。

③ 特許権

次に特許権である。事業や製品の成長と市場のシェア、自社の利益をどう確保するか。自社の事業をいかに早く育て強くしていくか。サービス業でも優れた技術(方法)により大きな効果があれば特許権が付与される。特許権はビジネス上で強力な武器になる。自社で開発した技術の権利化はもちろん、足りない技術や優れた特許を導入して強くすることも考える。大学や研究機関、他社から知的財産権の実施許諾を得ることも考えられる。

④ 意匠権

 開発方針が立ち具体的な検討が進むと製品の形状デザインも決まっていく。デザインの保護が必要となれば意匠権の出願を考える。

⑤ 実用新案権

 最後に補完的に、そして戦略的に出願するのが実用新案である。実用新案は権利期間が10年と短く、しかも出願した時点で登録にはなるものの、権利行使をする時には特許庁での技術評価が必要となる。もちろん発明ほどではなくちょっとした工夫も製品にとっては大きなポイントとなるので、製品のライフサイクルや売り方、ライバルへのけん制などを鑑みて出願を検討する。

 ところで、権利構築の順番を提案したが、出願の前に必要なのが調査である。特許庁は特許電子図書館をずいぶん充実させており使い勝手も良くなっている。そして経済産業局特許室や発明協会にその使い方を丁寧に教えてくれる人材もいる。わからなくなったら聞けばよい。ここで考えた商標や発明したアイデアが新規なものか、あるいは類似しているのか、すでに他社が先行しているのか。商標・特許・意匠・実用新案を調査して、開発方針を深めていく。調査により技術的な動向もおおよそ把握することで今後の方針も立てやすくなる。そして、試作やモニターでテストをすると改善点や新たな発想がでてくる。このアイデアを逐次書き溜めておいて次の商品やサービスへプラスするとよい。それが特許の強化と延命につながるのである。

次回に続く
記事一覧